(2015年6月22日解決)
依頼者A(30才の女性、主婦、パートタイマー)は夫の運転する車両の助手席に同乗していたが、加害者Bの運転する車両に追突され頚椎捻挫、腰椎捻挫の傷害を負った。
AはCクリニックに6か月間通院し、消炎鎮痛等の治療を受けたが、頚部痛、腰痛の後遺障害が残存した。
しかし、Bの加入している自動車任意保険D損害保険会社は、後遺障害のことには何ら触れず、傷害の分に関する損害賠償額を提示してきた。
Aは当事務所に相談したが、Aには後遺障害があると判断しCクリニックに自賠責後遺障害診断書の作成を依頼することにした。
その上で、当事務所は静岡自賠責損害調査事務所に被害者請求をしたが、後遺障害非該当であった。
当事務所は、詳細な意見を付して静岡自賠責損害調査事務所に異議申立てをしたところ、静岡自賠責損害調査事務所はCクリニックに医療照会をし、同事務所はその照会をもとに、「Aの症状は、初診時から症状固定時まで、ほぼ一貫しており、長期にわたる治療においても症状が消退することなく継続していたもの」として、頚部症状、腰部症状とも第14級9号(局部に神経症状を残すもの)と認定し、併合14級と判断した。
当事務所はこの判断をもとにD損保と交渉したがD損保の態度は固く、傷害の慰謝料、後遺障害の慰謝料とも裁判所の基準(赤本)から、はるかに低く、労働能力喪失期間も2年間しか認めず、既払金125万円の外に200万円の支払いの提示しかなかった。
そこでAは、やむなく静岡地方裁判所掛川支部に損害賠償請求の訴を提起した。
裁判所は、A、Bに対し、Bが既払金125万円の外に273万円をAに支払うとの和解案が示されAB双方ともこれを受諾し、訴訟上の和解が成立したものである。
傷害の慰謝料は93万円、後遺障害の慰謝料は110万円と裁判所基準(赤本)で、後遺障害の逸失利益についても基礎年収を賃金センサス第1巻第1表の女性労働者の平均年収354万7200円、喪失期間を5年としたものであった。
結局、当初提示額よりも73万円増額になったが、D損保は訴訟外の交渉段階で、このような額を提示すべきであったと思う。
200万円以上は支払わないので「裁判でも何でも自由にやりなさい。」という態度は、あまりにも、裁判所基準という、いわば世の中における解決の規範を無視するもので、許容できない。