保険代理店向けセミナー

2016年3月10日,静岡県教育会館におきまして,当事務所主催の「交通事故セミナー」が開催されました。

当事務所の所属弁護士がお話しした内容は次のとおりです。

 
 
次のセミナーからは,「相続と保険」というような内容で,無料セミナーを開催したいと思っていますのでご期待ください。
 

 

 

損害保険代理店・バイク販売、修理業者のための交通事故セミナー

2016年3月10日㈭

於   静岡県教育会館

講 師  弁護士 大橋昭夫

 

1 静岡県内の交通事故

(1) 静岡県内で2015年に発生した事故の件数は静岡県警の調べによると3万2491件である。

   前年度からすると1008件減ってはいるが、まだまだその数は多い。

(2) 2015年に発生した事故の内、153名が死亡し、4万2533名が負傷している。

   毎年、県民のかなりの人々が交通事故に遭遇していることになり、交通事故をめぐる法律問題は県民にとって欠かせない課題であり、又、保険金支払いをめぐる問題も県民の大きな関心の的となっている。

(3) 私たちは「被害者の救済を第一」とする被害者側専門の事務所であり、毎年多くの交通事故を扱い、交通事故における適正な損害賠償とはということを、毎日、考えざるを得ないことになっている。

   本日は、交通事故被害者と一番近い距離にある損害保険代理店、交通事故でも一番大きな被害を負いやすいバイクの運転者と密接な関係にあるバイク販売、修理業者の皆様方にお集まりいただき、交通事故をめぐる実務の現状について考えてみたい。

 

2 損害保険代理店の法的地位と社会的役割

(1) 損害保険代理店は、商法第27条で規定する代理商に該当し、損害保険会社のために、その平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者と位置づけられている。

   そして、この特別法にあたる保険業法第2条21項は、「この法律において損害保険代理店とは損害保険会社の委託を受け、又は当該委託を受けた者の再委託を受けて、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者で、その損害保険会社の役員又は使用人でないものをいう。」と具体的に定めている。

(2) このように損害保険代理店は、損害保険会社を代理して、保険契約者たる顧客と取引する地位にある。

   そして、保険契約者が交通事故の加害者になれば、事故通知を受付け、これを損害保険会社にただちに連絡し、その後の保険契約者との窓口にもなる。

(3) 又、保険契約者が交通事故の被害者になることも多く、同人が弁護士費用特約付保険等に加入しているような場合、交通事故被害者の最善の利益のために保険金請求手続のアドバイスをしたり、場合によったら適正な損害賠償額や治療方針のアドバイスをすることが期待されている。

   損害保険代理店が各損害保険会社との乗合型ではなく、専属型の代理店であれば、被害者に損害賠償金としての保険金を支払うのも、弁護士特約付保険を支払うのも同一の損害保険会社ということもある。

   この場合は、被害者に対するアドバイスが、損害保険会社の支払いの増加にもつながり、損害保険代理店は悩むことになる。

   特に、乗合型であれば、複数の損害保険会社の保険商品を扱っている関係上、上記の可能性は益々高くなる。

(4) このように、弁護士特約付保険の販売した損害保険代理店には利益相反的立場ということが常につきまとい、これが損害保険会社との関係で常に悩みの種になる。

   しかし、後記するように、日本には、法律ともいえる裁判所基準がある。

   この基準がある限り、すべての国民はこれに準拠することが求められているものであって、そのことは、損害保険会社も、損害保険代理店も同じであると思われる。

   そうすると、損害保険代理店は、顧客である被害者に対し、裁判所基準からのアドバイスをする義務があるのではないか。

   但し、このことは、損害保険会社が営利企業であることを鑑みると、なかなか難しいことであって、それぞれの損害保険代理店の良心によるのではないかと思われる。

   日本損害保険協会発表の平成26年度損害保険会社の決算概況によると、正味収入保険料は前年に比べて4パーセント増収になり、初めて8兆円を超え、8兆831億円となったが、正味支払保険金が4兆6054億円と前年の4兆5603億円を上回っており、5年ぶりに黒字を回復したというが、まだまだその将来の業績予想は明るくない。

   このことは、損害保険代理店に対しても圧力要因となり、支払保険料を抑制する方向での動きが要請されることにもなるものと思われる。

   短期的には契約件数を多く獲得し、支払額を少なくするように対応する損害保険代理店が、損害保険会社にとって優良な代理店と評価づけされようが、長期的にみると、消費者である保険契約者の利益に立つ損害保険代理店の方が高評価になるものと思われる。

   それは、少しばかりの期待を含めてはいるが、長い目でみれば、顧客の被害者から感謝される立場を取った方が、その者が末長く、その損害保険会社と契約することになり、損害保険代理店、ひいては損害保険会社の利益になることだとも考えられる。

 

3 損害保険料率算出機構の役割と調査の現状

(1) 後遺障害の認定を行う機関が「損害保険料率算出機構」で、静岡県の場合は同機構の静岡自賠責損害調査事務所が担当している。

   この機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」によって設立された非営利の民間法人である。

   同機構は損害保険会社から集められた保険データにより、保険料率や参考料率などを算出し、各損害保険会社に提供している。

   そして、この機構は、自賠責保険ばかりでなく、地震保険、自動車保険、火災保険、傷害保険、介護費用保険などの参考料率を算出している。

   この機構は保険料率を算出する仕事の他に、自賠責保険の損害調査も担当している。

   この機構は、理事長が浦川道太郎早稲田大学法学部教授、理事に損害保険会社の社長らを擁する団体で、運営費も自賠責保険収入の他に会員の損害保険会社からの収入に依存しているのである。

(2) 静岡自賠責損害調査事務所が専属的に行っている後遺障害認定の調査は、果たして、公正で透明性を有するものであるか。

   公正であるかはともかくとして、少なくとも透明性に欠けることは歴然としている。

   静岡自賠責損害調査事務所の調査は、診断書、後遺障害診断書、診療報酬明細書等の書面審査、XP、MRIの画像読影が原則で、職員が被害者と直接面談し、被害状況等を確認することはしていない。

   但し、醜状障害については、例外的に被害者と直接面談し、醜状痕の形状を確認している。

   直接、面談することはしないので、後遺障害診断書の記載内容が後遺障害等級認定に大きく影響する。

   静岡自賠責損害調査事務所は、診断書に記載のない事項以外の症状はないものとして取扱うので、被害者は自己の症状を主治医に余すところなく記載してもらう必要があるが、多くの場合、そうなってはいない。

   日々、実感するところではあるが、多くの医師の作成する後遺障害診断書は、本当に簡単である。

   勿論、充実した内容の後遺障害診断書を作成する医師も存在するが、その数は少ない。

   等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における「障害等級認定基準」に準拠して行われるが、後遺障害診断書から直ちに等級の認定が困難な場合、医師への照会や、指定医での再診断の受診を要請するものとされているが、指定医での再診断などは、ほとんど実施されていない。

   医師への照会は比較的多く実施されているが、日常の診療活動の中で記載するため概ね記載内容が簡単で、マイナス評価の材料になることはあっても、後遺障害認定につながるプラス材料になることは余りない。

   静岡自賠責損害調査事務所は、医学的専門知識を要する場合は、顧問医師への相談を実施し、被害者の適正な補償を図るための調査を行なうとしているが、顧問医師が静岡県内のどの病院のどの医師なのか、その顧問医師の経歴はいかなるものか、公表されておらず、透明性は全くない。

   かえって、顧問医師への相談は、被害者の後遺障害を切り捨てる方向で、事実上、機能しているのではないかとの危惧すらある。

   調査事務を担当する職員には、認定結果に差異が出ないよう、「認定マニュアル」や「認定フローチャート」が渡されているようであるが、これも推測の域を出ず、不透明である。

   職員が作成した後遺障害等級案を認定課長がみて決裁するが、職員の方から被害者に追加資料を提出して欲しいと要請することはほとんどないので、カルテに受傷当初から症状固定時までの症状が詳細に記載されていれば、これを出す必要がある。

   後遺障害認定のための有利な資料がなければ、「認定マニュアル」に沿って単々と後遺障害非該当ということになる。

(3) 一旦、後遺障害の等級が非該当や、低位等級に認定されると、これを覆すことはなかなか困難である。

   損害保険会社に異議の申立てをしても異議が認められる可能性は、せいぜい10パーセント以下であると推測される。

   裁判官も、この静岡自賠責損害調査事務所の後遺障害等級の認定結果を重視しており、なかには、公的な判断だと考えている者もいる。

   損害率を70パーセント以下に抑制しないと損害保険会社の経営に赤信号がともると言われているが、私ども被害者側弁護士からすると、被害者に厳しい調査がなされているというのが実感で、特に、むち打ち症事案にそれが顕著である。

   追突事故が交通事故の60パーセント以上を占める現状では、これを非該当、もしくは14級の低位等級にするか、あるいは12級とするかでは、任意保険の支払いに大きな違いがある。

   12級を容易に認めると、損害率も70パーセント以上になることが容易に推測でき、ここに政策的な判断が働いているのかとも思う。

(4) こうは述べても、静岡自賠責損害調査事務所の調査は現実的には大きな権威を有しており、被害者にとっては医師との関係が大変重要になる。

 

4 医師との連携の有用性

(1) より良い後遺障害等級を獲得するためには、まず主治医との関係が何よりも重要である。

   主治医に被害の実態を把握してもらえなければ、カルテの記載も簡単になり、当初からしびれがあってもカルテに記載してもらえず、頚椎や腰椎のMRIを撮影してもらえないことになる。

   今、XPでは骨折位しか情報は得られず、ヘルニア等による神経根の圧迫による神経症状はMRIでしかわからない。

   熟練の放射線診断専門医が読影すれば、MRIにあらわれた変性所見が、外傷によるものか、加齢性のものかは区別がつき、単なるむち打ち症としての頚椎捻挫、腰椎捻挫で処理されることはない。

   MRIは水分をみているもので、ヘルニアによる変性部分が白っぽくなっていれば、そこにまだ水分があり、その変性は比較的最近に発生したものであり、事故との因果関係は強く推認されるという。

   これに反し、黒っぽくなっていれば、そこには水分がなく、その変性は以前に発生したものと推認され、加齢性のものと評価されることになる。

(2) いずれにしても、MRIを撮影していなければ、これらの医学的証明ができないことになり、14級はともかくとして、12級の獲得など到底望めない。

   MRIは事故から2か月以内に撮影することがベターであるが、1年位経過したとしても無駄なことはない。

   私どもの事務所は、被害者にはとにかくMRIを撮影してもらうよう、それも解像度0.5テスラや1.5テスラではなく、3テスラで撮影してもらうようアドバイスしている。

   1.5テスラと3テスラでは神経の写り具合に雲泥の差がある。

(3) MRIの読影は整形外科医ではなかなか困難で、10年間位の経験を有する放射線診断専門医が適当であると言われている。

   私どもの事務所は、この読影を専門にする東京と大阪の医師を擁する会社に依頼している。

   弁護士特約付保険に加入していれば、この画像鑑定も調査料として損害保険会社が負担してくれる。

(4) 異議申立や裁判においては、医学意見書を提出する必要が出てくるが、これも上記会社に整形外科医や脳神経外科医が存在するので、当事務所でも医学意見書の作成依頼は容易になっている。

(5) 損害保険代理店の方々が交通事故にあった顧客を援助したいと考える場合、私どもの事務所へ相談いただければ画像鑑定や医学意見書の作成は可能となっている。

(6) その他、私どもの事務所は、主治医に面会し、被害者の後遺障害の実態を十分に把握し、自賠責後遺障害の被害者請求に際しての意見書作成も行っている。

(7) 医師との連携は、まだまだ不十分であるが、医師の協力を得て、今後も充実させていきたい。

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