日本でのむち打ち症の現状
日本で発生する交通事故の60パーセントが追突事故で、その結果、頚椎等の症状で苦しんでいる被害者が多数存在します。
損害保険会社は、いわゆるむち打ち症などは、2,3か月で治癒するものだと声高に主張し、2,3か月の経過で治療費の打ち切りを迫ってきますが、6か月になれば、ほぼ例外なく治療費を打ち切ってしまいます。
この理不尽に苦しむ被害者の方々は多いのですが、被害者は1人1人孤立しており、大きな声にはなりにくく、この不条理は大きな批判を受けることなく、この日本列島でまかり通っているのが現実です。
こうした中で、外傷性頚部症候群(むち打ち症)だと診断され、消炎鎮痛の処置や理学療法等を受けても症状は一向によくならず、遷延化している被害者が少なからず存在します。
既に当事務所のコラムで取りあげております線維筋痛症もその1つですが、外傷性脊髄空洞症もその代表的なものでありますので、本コラムでその問題点を指摘したいと思います。
外傷性脊髄空洞症とは
脊髄空洞症は、脊髄の中心部に脳脊髄液が浸入し、それが空洞をつくることにより、脊髄を内側から圧迫して、しびれや痛みといった、さまざまな神経症状を発症させる難治性の疾患です。
脊髄の内、頚椎に発生することが多いため、上肢や手の痛み、又は、しびれ等の感覚障害で始まることが多く、やがて、手や腕の麻痺や筋萎縮、歩行障害、さらには排尿や排便の障害が出てくるという、やっかいな疾病です。
追突事故等によって、頚部等が過伸展をすると脳脊髄液が漏出することは脳脊髄減少症で知られていますが、脳脊髄液が頚椎中心部に浸入すると空洞をつくり、上記のような様々な障害が出てきます。
空洞自体は頚椎MRIの読影で明確になりますが、脊髄空洞症は上肢や手の痛み、しびれで始まることが多く、むち打ち症などとの鑑別が必要になり、主治医もなかなか脊髄空洞症と診断することは躊躇するのが現状です。
しかも、chiari奇形という先天的な脊髄空洞症もありますので、なかなか外傷性脊髄空洞症との診断がなされることは少ないのです。
当事務所での対応
私たちの事務所は外傷性脊髄空洞症の案件を取り扱っていますが、静岡自賠責損害調査事務所の認定する等級はせいぜい第14級9号(局部に神経症状を残すもの)です。
外傷性脊髄空洞症を発症した被害者は、全身のしびれ等の症状に悩まされ、普段から家の中にじっとしていなければならないことも多いのです。
このように、外傷性脊髄空洞症の被害者の被害は重篤ですが、損害保険会社はそれを理解せず、裁判例も少ないこともあって、裁判所にもその被害実態が理解されているとは言い難い状況です。
しかし、被害実態を適切に訴えていけば、外傷性脊髄空洞症の被害者の労働能力喪失率が14級9号の5パーセントではなく、それ以上の喪失率になることも可能ではないかと思います。
当事務所は、それを信じて、外傷性脊髄空洞症に罹患したと思われる被害者の事例も、単なるむち打ち症だとして逃げることはせず、新判例を獲得すべく挑戦したいと思っています。
外傷性脊髄空洞症の被害にお悩みの被害者はお気軽に当事務所までご相談下さい。